103 圧力計

◎目的とか、それっぽいなにか
友人が活版印刷でカレンダーを作っている。活版といっても使っているのは樹脂版なので、友人いわく、(活字を使っていないので)厳密には活版ではないらしい。このこだわりはおたくっぽい。言うといやな顔するだろうから言わない。
それはそれとして、いつもは一色刷りなのだけど、もろもろの事情により二色刷りをしたいとのことで労働力としてかり出された。
しかし多版刷りに慣れてない友人の動きのあれやこれやは突っ込みどころ満載なのですが、失敗もまた楽しそうにしているので口は出さずにお手伝いに尽力。それでもせっかく手伝うのだから取れるデータは取っておきたいと圧力計を作ることにした。
知りたいのは活版印刷時のプレス圧。
友人が使っているのは版画のプレス機にほど近い機構を持ったプレス機で、ハンドルをぐるぐる回すとローラーがぐるんぐるん回って圧をかけながら印刷できるというやつ。このプレス機のプレス圧はいかほどか、ということ。

◎圧力を測るということ
圧力とは単位面積当たりに加わる力の大きさと定義される。質量が重力と関係して発生するのに対して圧力にとって重力は重要な要素ではない。力の向きも関係ない。そのため絶対値として数値化することが難しい。特に今回測定したいプレス機のプレス圧で考えると軽く1割程度の測定誤差がプレス機が構造上持つ不確定要素も手伝って不可避的に発生する。というわけでこの圧力計は絶対値を求める方向ではなく、相対的にどの程度違うかを求めるためのツールとした。もちろん、粗い数値であれば絶対値としての圧力を知ることはできる。そんな感じね。

◎圧力センサーを選ぶ
・最初に見つけた秋月の圧力センサー
(圧力センサーFSR402)
価格が安くて良い感じだが、センサー中央部が凹むことで圧力を測定するタイプのため、機構的にローラーで全体を押さえつける圧を測ることは難しい雰囲気。
センサーに圧がかかるとセンサーの抵抗値が下がる。
データシートによると、変化する抵抗値をオペアンプを使って電圧に変換することで圧力を数値化できる。実際に試したところ変化が急激過ぎて圧力計として使うには何らかの工夫が必要。圧を感知するスイッチ的に使う用途であればOKなのだが。

・次点として千石のTekscamのFlexiForce Standard Model A201
(SparkFun SEN-08685 FlexiForce圧力センサー100 lb)
こちらもセンサー面に圧がかかると抵抗値が下がるタイプ。計測範囲が0-100lbと幅広い。データシートを参考に電圧変換してみると制御性も良く、圧力計として使えそうな印象。
センサーの基準電圧として-1Vが指定されている。-1V以外でも使えるが、制御性が若干変わる模様。

◎出力装置を作る
・基本構造
装置の基本構造は、加圧によって抵抗値が減少するセンサーに電圧を加え、生じる電流をオペアンプで電圧に変換する。IV変換。

・回路図
004.jpg
オペアンプでIV変換するので、両電源を用意。抵抗分圧で両電源を用意するついでにパイロットランプを点灯。LEDの順方向降下電圧 (VF)を使ってセンサーの基準電圧(-1V)も作ってしまおうという魂胆。
問題は汎用LEDのVFは少ないものでも1.8V程度ということ。テストでは9V電池の電圧を直接抵抗分圧し、黄色LED(VF:1.8V)を基準電圧にした。OKだった。ただし、テストでの手法では電池の消耗に従いオペアンプに供給する電圧も下がるため、気持ち悪さが残る。
本番ではLDOで5Vを作ってそれを抵抗分圧した。定電圧を5Vにした理由は扱いやすさから。センサーの基準電圧はVFが低い赤外線LEDを使用。ただし、パイロットランプを兼ねるため、プラス側は赤色LEDを使う。VFが違うのでLEDの電流制限抵抗を変えてどちらも2mAが流れるようにした。調整の末、プラス側2.46V、マイナス側-2.51Vで分圧できた。
抵抗分圧部での消費電流は15mA弱(計算値)というところ。
5Vから両電源を作っているため、オペアンプは±2.5vで駆動できる低電圧タイプから選択した(NJM4580)。

・校正
センサーの反応は電圧として出力され、それをテスターで読み取る。可変抵抗の100kを調整することで出力される電圧の増加率が変わる。とりあえず可変抵抗の中央(50k)で試したところいい感じなのでこれで良しとする。
初期値は約-5mV。これは両電源のばらつきなどによるオフセットが原因と思われる。解決策もあるが部品点数が増えるのでやらない。
校正は、センサーを板で挟んでその上に重しをのせてテスターの数値を読む。重しを2k、3kと変え、その数値をグラフ化する。このグラフを根拠に圧力を測定するため、独自基準の「圧力」となる。これが限界。

・実体配線図
005.jpg
基板はDAISENのPU26×44。26×44mmと小さいので部品箱に放り込んでも大丈夫。
002.jpg
光っているLED(左)が赤色LEDで光ってないの(右)が赤外線LED。赤外線LEDは光っているが赤外線なので見えない。見えないけどVFはちゃんと1V程度あるので基準電圧として使える。
手前の赤黒が電源。右奥の青橙がセンサーに向かう。左奥の赤黒からセンサーの情報を電圧にかえたものが出力されるの。テスターにつなげて数値を読み取る。

◎課題
・センサーの特性
加圧直後から抵抗値が変化し、数値が落ち着くまでに1分程度かかる。落ち着くまでの数値推移は線形らしいのでそれなりのプログラムを組むことで表示数値を落ち着かせることもできる。装置の規模が大きくなるのでやらない。

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