002 ぺるけ氏のFET差動バランス型ヘッドホンアンプ

ぺるけ氏のFET差動バランス型ヘッドホンアンプ作例記

◎目的、みたいなもの

平ラグもいいけど、配線に手間がかかるので遠巻きに見ていたペルケ氏のFET差動バランス型のヘッドホンですが、基板のレイアプトパターンを紹介されている方(アマチュア無線局JA1WBYの電子工作:「ぺるけ@版 バランス式 ヘットホンアンプ」のプリント基板化 Ver3b)を発見。これ幸いと借用しています。感謝です。しかしよく見ればACアダプタを利用するパターンなのですね。個人的なことで恐縮ですが、ACアダプタはコンセント周りがごたごたするし、抜き差しがめんどくさいという事情もあってAC100Vから電源を作るパターンに変更しました。部品配置は既に紹介されている方の作例を参考にしています。まあ、コピペじゃないから良いですよね、というゆるい感じです。

◎回路図
ぺるけ氏の設計そのままなので、回路図や定数などは氏の当該ページを参照していただければと。後述していますが、基板にはFETのばらつきを吸収できるように、半固定抵抗を追加できるパターンを追加しています。回路的には、二つのFETのソースの間に半固定抵抗をはさみ、そのセンターをマイナス電源に渡すといったイメージです。
電源部もぺるけ氏の受け売りですが、トランスに12V0.5Aを使っています。この場合の回路図を添付します。
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ぺるけ氏との違いは使っているトランスの電圧が違うだけです。本機では何となく動いていますが、実はツエナーダイオードの定格を現状より1ランク低いものにして330Ωの抵抗を500Ω位に変えるべきかなと思います。
本電源の各部の電圧について、事前に120Ωの負荷抵抗を与えた状態でチェックした数値を掲載します。実機の負荷もこんな感じだと思います(というか実機もこんな感じでした)。
 *使用トランス 12V/0.5A
 *ツエナーダイオード 12-C2
 *出力負荷 各チャンネルに120Ω
 *各部の電圧(全て実測値)
  0VーA間:15.62V
  0VーB間:15.25V
  0VーC間:13.63V
  0VーD間:12.95V
  GーV-間:ー1.59V
  G-V+間:10.09V
  330Ωの両端:1.54V(4.7mA)
  15Ωの両端:1.28V(85mA:各チャンネルの消費電流)
  2.2Ωの両端:0.4V(181mA:総消費電流)

やっぱりトランジスタのC-E電圧が2.35Vと、ちょっと低めなのが気になります。というか、いずれ先述したようにZDの定格を1クラス下げてVc-eを3V以上確保し、330Ωを500Ωにしたいです。本機のコレクタ損失は425mW(181mA×2.35V)なので放熱器は不要です。ZDの定格を1クラス下げても大丈夫でしょう。
んで、当然のことですが、電源を左右chに振り分けている2つの15Ωですが、これがばらつくと左右への供給電源の電圧が変わります。アンプ部で使うトランジスタのペアを心配するならばこの15Ωのペアにも配慮するべきだなと実感。


◎基板を作る
基板は100×150の感光基板を使うことにして電源部とアンプ部を一枚の基板上にレイアウトしました。アンプ部は左右チャンネルを独立させました。本当なら、左右チャンネルを対称にしたかったのですが、めんどくさいのでしていません。なので電源やアースは個別に配線します。
整流用ダイオードはダイオードブリッジも使えるようにしてます。あと、FETを選別しなくても良いように電流配分の調節用半固定抵抗が入るようにパターンを作っています。多回転タイプもOKです。んで、半固定抵抗が壊れたときのための保険としてパラレルで固定抵抗を入れられるようにしましたが、よく考えたら1/2の確立で役に立たない事が判明(笑)。それでもFET実装後に電流の過不足をチェックし、半固定抵抗の必要な方をショートさせるという用途でも良いかと、あるいは半固定抵抗値の微調整用途ということにしておきます。まあ適当に。選別品を使う場合はこの半固定抵抗用の3つのランド全てをショートさせます。
出力コンデンサは大容量を一つといった使い方に加え、小容量を並べるような使い方にも対応できます。
回路と見比べて「あれっ」と思われた方、大丈夫、電源ラインはジャンパーで処理します。GNDスペースを確保したかったという理由です。
基板のレイアウトパターンをPDFにしたのでどうぞご自由に。ちなみに、文字が鏡文字になっていることから想像がつくように、このレイアウト図は部品配置面からみたパターン図です。
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印刷用PDFデータはこちらに
FET_HPA_Balance_PCB_A.pdf

◎部品を並べる
部品レイアウトは図のようになります。回路図と見比べて配置します。特にトランジスタの2SAと2SCの勘違いは修正も面倒ですが、発見したときのショックが一番大変です。抵抗の組み間違いも良くあります。
GNDについても注意が必要です。本機の場合、電源部では、通常GNDとなるところがマイナス電源になっているので、整流器直後の0V点を回路全体のGNDとすると上手く動きません。本機のGNDは部品レイアウト図にあるGND指定のところから引き出します。
各チャンネルにはジャンパーが1箇所必要です。電源ラインなのですが、本機はBTL形式のアンプなのでこのジャンパーを忘れてもそれなりに音が出ます(笑)。
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同じく印刷用PDFはこちら
FET_HPA_Balance_PCB_B.pdf
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◎入出力とボリューム関連
こちらもぺるけ氏の設計そのままです。今回、入力端子に6mmタイプのTRSジャックを使いました。スイッチ付ですが、構造が簡単で安いので重宝しています。こちらも基板を起こしています。
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印刷用のPDFはこちら
LineIn-PCB.pdf


◎チェックと調整
各部の電圧/電流の値もぺるけ氏が紹介している通りです。氏がポイントとする部分の電圧と大差なければ問題なしでしょう。なお、電圧がの値が違う場合、十中八九部品の付け間違いやはんだミスです。この回路で部品が壊れるとしたら、+電源に直列に入っている抵抗が最有力候補です。次がリップルフィルタとして使っているトランジスタの熱破壊でしょう。
トランジスタの取り付けに問題があっても回路的には単純なので、各部の電圧を測ることで気付けると思います。つじつまが合わなくなっているところが問題点です。
かくいう私もFETのドレイン間電圧が1.8Vもあって、選別品を使っているのにこの値はおかしいといろいろ追いかけたのですが、回路の下流はバッファ部をはじめおかしなところはどこにもなく、行きついた結果がまさかのFETのばらつきでした(笑)。そう言う事もあるさと、半固定抵抗を組み入れて調整したら全てが丸くおさまりました。理屈が通用する世界なので、当てずっぽうな試行錯誤ではなく、仮説と検証で解決しましょう。

◎各部の電圧について
最終的な各部の電圧値を紹介しておきます。なお、選別品を使わない場合のドレイン間の電圧は0.1Vオーダーで調整できれば十分だと思います。
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数値は本機の実測値です。黒文字が左ch、赤文字が右chです。トランジスタのそばに両矢印を記して起きましたが、このB-E間に0.6V前後の違いを保ちつつ、FETのドレイン電圧がこの図のように下流に向かって上がって下がって減って増えし、結果的にコンデンサに同じ電圧で流れ込みましたとさ、ってな具合になっていればバッファ回路は上手く動いています。

なおV+ですが、電源部の出力部に直列にいれた15Ωで左右チャンネルに振り分けているため、左右の消費電流に違いがあればそれに応じて供給電圧が厳密にいえば若干変わります。もちろん、回路の下流でショート事故が起きて大電流が流れるとこの抵抗が燃えます。

◎アースの取り方について
いつも悩むのがアースの取り方です。ぺるけ氏は詳しくは語っていませんが、なにやら入力端子のところでシャーシアースを取っているご様子ですよ。なので入力からのラインにシールド線を使いつつも、ボリュームへの入力は信号線だけでシールドは熱収縮チューブで閉じられています。そんで、ボリュームからアンプ回路へ向かうラインはのシールドは左右ともにボリュームのアース側に接続され、そのままアンプ部のアースにつながっていることでしょう。おそらくはたぶん。んで、ヘッドホン出力のアースはボリュームと思わせつつ、電源とセットになっているアンプ部のアース、もしかしたら電源部のアースにつながっていると思われ、そのまま入力端子を経由してシャーシアースに落としているんだろうな、という予想。あくまでも予想。おそらくはたぶん、それさえも平穏な日々。
で、本機のアースはといえば、ぺるけ氏のアース処理を推測しておきながらなんですが、ボリュームの根元でシャーシアースを取っています。入出力のアースは直でシャーシアースに、アンプ部と電源部のアースはプリント基板直下で一度集め、その後にシャーシアースにつなげています。考え方はいろいろですが、アースループにさえ注意すればとりあえず大問題にはならないはずです。
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