海辺の散歩者

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近所の浜辺で、あるいはリゾート地の砂浜を散歩する時、波打ち際に打ち上げられた貝殻や、外国語の書かれた漂着物などを拾いあげ、しげしげと眺める・・・。誰もが一度は経験したことと思いますが、この遊びのことを最近では「ビーチコーミング」と呼び、カメラや採集袋を手にした多くの愛好者が朝の浜辺を散策しているそうです。浜辺に漂着するそれらを眺め、いったいどこからやってきて、どんな経緯でここにいるのか?そんなことを想像するだけでも、確かにワクワクしてきますよね。

そんな浜辺の景色ですが、新年を過ぎた頃から、房総半島を中心にした広い範囲で珍客の姿を見ることができるといわれています。流木や海藻に紛れて漂着するその珍客とは、なんと熱帯や亜熱帯地方の魚。熱帯魚がどうして・・・と疑問に感じるのもごもっとも。夏の繁殖期に増えた熱帯魚の一部が黒潮に乗って日本近海まで流されてきたのです。でも、秋でなく、なぜ冬の浜辺に?と思いになる方はかなりの通ですね。実は、海の季節は陸の2ヶ月遅れでやってくるため、海の冬は新年を過ぎた頃から本格化するんですね。そして、フィリピンや南洋からきた熱帯魚は急激に低下する海水温に耐えられず、新春の浜辺に漂着してしまうのです。
あらゆる生物は種の繁栄と分布域の拡大をとりあえずの目的としています。それは黒潮を利用する南方からの熱帯魚らも例外ではありません。しかし、沖縄を越えて日本近海まで来てしまった彼らにとって、この地域の冬の海水温は耐え難く、越冬できないのです。そうした、ある意味向こう見ずな行動を取る魚は死滅回遊魚と呼ばれ、結果として新春の浜辺をにぎわすのです。
ところがこの数年、漂着する熱帯魚を見られなくなったというのです。環境変化による種の絶滅や海洋汚染を疑う声も挙がったようですが、きちんと調べてみると、黒潮の流れに理由があることがわかったそうです。ここ数年で黒潮が伊豆半島に近い場所を流れるようにり、その結果、日本近海の海水温の低下が穏やかになり、熱帯魚も越冬できる環境ができつつあるとのこと。実際、クマノミの越冬や繁殖例も報告されているようです。

新春の浜辺をにぎわしていた珍客が今では冬の海中を彩っているかと思うと、見えないその姿を想像するのも妙に嬉しいものです。彼らのそんな姿は、向こう見ずな行動かどうかなんてやってみなくちゃ分からないよ!と、教えてくれているようにも見えますね。

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このページは、k-wataが2008年2月22日 01:44に書いたブログ記事です。

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